モンテビデオを出発してから数日…
地図を片手に河畔の町を転々としていた。
なかなか有力な情報を得ることのできない毎日だったが、
とある田舎町で衝撃的なモノを見つけてしまったのだ。
これがタライロンではなく、タライーラ…
所謂ホーリーの最大種とされるこの魚こそが今回の釣り旅の大本命。
Hoplias lacerdae / ホプリアス・ラセルダエ
現地名、タライーラ・アスーもしくはタライーラ・アズール。
その呼び名の通り、近縁のタライロンに負けず劣らず大型化し、
青みを帯びた漆黒の魚体を有するという。
釣り上げた時に、これぐらいあった。
と、両手を広げて見せてくれたが、頭の大きさからサイズは想像できた。
…漁師曰く、10㌔を軽く超えていたという。
これまでに釣り上げてきたタライーラといえば、
平均で3~40センチ程で50センチあればかなり大型。
タライロンに比べると小型なイメージを持っていたというのもあって、
この頭骨を見たときはかなりの衝撃を受けた。
黒い水に棲む「蒼い狼」
そう、我々はこの魚を追い求めてウルグアイにやってきたのだ。
漁師の家にあった泳がせ仕掛け。
大型のドラードやタライーラ・アズールを釣るためのモノだとか…
我々は旅の目的を伝え、この漁師にガイドをお願いすることに…
しかし、良い返事は返ってこなかった。
昔は大型も多く棲息していたが、乱獲の影響で今は数が少なく難しいとのこと。
そしてなによりタイミングが悪かったな…と。
1月のウルグアイは最も雨が少なく、乾季にあたる時期。
通常であればベストシーズンに違いないのだが、異常気象の影響だろうか。
上流域で降り続いた大雨によって河川は大増水。
旅の道中は突発的なスコールに度々見舞われ、水位も日に日に増す一方だった。。
目をつけていたのは町の近くを流れる小さな支流だったが、漁師曰く。
「増水と水温低下で釣りをするだけ無駄だ…」
「今の状況でタライーラ・アズールを釣るのは難しいだろう。」
「今の状況でタライーラ・アズールを釣るのは難しいだろう。」
しかし、少しでも可能性があるのであれば…
「どれだけ可能性が低くてもいい!可能性がゼロでなければ!」
「釣りに連れて行ってください!!」
慣れないスペイン語を使い、我々は頭を下げて頼み込んだ。
「数日雨が降らなければ可能性はあるが、あとはお前たちの運次第だな。」
これまでの経験と確固たる自信があるのだろう。容易に首を縦に振ろうとしなかった。
我々はおっさんを信じて、この田舎町に腰を据えることにした。
川の状況が良くなることを祈る日々だったが、
小さな田舎町での暮らしは楽しく、直ぐに顔見知りも増えいく。
お世話になった、モニカおばさん。
この町で、いやウルグアイで一番お世話になった今回の旅の恩人。
「こんな田舎町までよく来たわね。日本人が釣りをしに来たのは初めてよ!」
「大きい魚が釣れるといいわね!」
見ず知らずの我々を度々食事に招いてくれたり、
冒頭の漁師をはじめ、いろいろな人間を紹介してくれたり。
滞在期間中は本当によく面倒を見てくれ、困ったことがあれば度々助けてくれた。
大家族の肝っ玉かぁちゃんなのだが、我々にとっても優しいお母さん的存在。
我々の旅はいつも人の縁と出会いに恵まれているな。
「人の縁」と「出会い」に感謝しないと。
この水域のどこかに…間違いなく奴が潜んでいる。
あとは釣りに出ることさえできれば…