12月の頭から一週間ほどタイへ。
年明けの遠征予定もあり究極の金欠状態だが、
貴重なメコンオオナマズ漁の体験ができるということもあって急遽渡航を決めた。
野生下で育ったメコンオオナマズの姿を見てみたいというのもあったが、
メコンオオナマズ漁に関してもChillのkimiくんから話を聞いており、以前からとても気になっていた。
というわけで、釣りとは違う目的メインで訪れた今回。
滞在期間中は親しい友人が主催する
ChillTripのツアーに参加させて頂きました。
http://www.chillfishing.com/
メコンオオナマズ / Pangasianodon gigas
現地名:プラーブック
全長2~3m、体重300kgに達する世界最大の淡水魚の一つ。
かつてメコン河の広域に多数棲息していたとされているが、
ダム開発による大規模な自然環境の変化、乱獲によって個体数は大きく減少。
天然分布のメコン河流域では保護対象とされており捕獲が禁止。
またワシントン条約付属書Ⅰに記載されており、国際間での商取引も禁止されている。
現在ではメコンオオナマズの養殖技術が確立されたこともあって、
食用としても出回り、タイの釣り堀においても手軽に狙うことができる。
タイに釣行する日本人にとっては馴染み深い存在??
…ゆえに絶滅危惧種という認識は薄いのではないだろうか。
メコンオオナマズを釣りで狙うのであれば、必然的に釣り堀になってしまう。
*写真は懐かしの旧ブンサムラン。
そんなメコンオオナマズの完全な養殖技術が確立され、次のステップに入りつつある今。
タイの水産局はメコンオオナマズの幼魚をメコン河は勿論、
各地のダム湖などに放流し、水産資源として利用する取り組みを進めているという。
今回のツアーで訪れた湖もその一つ。
最初の放流から20年程経過した今、
放流された各地の湖で大きく育ったメコンオオナマズが捕獲されるようになった。
この湖では年間漁獲数が設定され、
タイ国水産局管理の元、公式にメコンオオナマズ漁が行われている。
今回は許可を得た漁業者の方に同行するカタチで、
メコンオオナマズ漁に体験参加させていただいた。
自分が参加した期間はメコンオオナマズ漁解禁日から三日間。
初日の日中、自分達が到着する頃には湖上のいたるところに刺網が設置されていた。
網を仕掛けるポイントは過去の実績から選んでいるのだろうか。
魚の通り道になるであろう水通しの良い場所から、
大規模なワンドの奥まで、ポイントの選定は漁師によって様々だ。
湖畔にて今回お世話になった漁師さんと会い、湖上に設置された網をボートで見て回る。
これを定期的に繰り返し、
魚が掛かっていれば明るくなるのを待って水揚げされる。
使用した専用刺網の目合いは50㎝。
彼らが狙うのは大型の個体のみ…
刺網に掛かるメコンオオナマズのアベレージは2m 100kgオーバーとのことだ。
初日の深夜に3本のメコンオオナマズが網に掛かった。
一連の作業を体験させていただき、明るくなってからは大迫力の水揚げが始まる。
強靭なメコンとは言え、
一晩中あの状態で大丈夫なのだろうか…??
不安はあったが、朝一になっても生きていた。
流石はメコン…
この魚が死んでいるところを容易に想像できない。
パタパタエンジンのロングボートで続々と運び込まれる巨大なメコンオオナマズ。
初日の解禁日だけで6本のメコンオオナマズが水揚げされた。
漁師さんにお願いし、みんなで抱っこ&記念撮影させていただいた。
暗いうちに見るとそれほどでもないように思えるのだが、日中に見るとやっぱりデカい…
一人では決して持ち上がらない重量感。
大人しそうな顔つきからは想像もつかないような力強さに驚かされた。
この日漁獲された最大個体は2mオーバー。140kgを超えていた。
野生下で育ったメコンオオナマズ。
釣り堀でそれほど大きな個体を釣り上げたわけではないのでなんともだが、
尾びれや体格など、釣り堀で見てきた魚とはまた違った雰囲気だった。
漁獲されたメコンオオナマズは生態調査に用いられたり、
食用としては勿論、各地の釣り堀にも出荷されている。
キロ換算で買取りされるのだが、買う側も売る側も計量時は真剣そのもの。笑
これほどの大型個体になるとかなり高額で取り引きされるようだ。
メコンオオナマズ漁が行われるのは夜間。
日中は釣り以外やる事がない…笑
というわけで、渓流域にてストリームフィッシング。
マシール系のコイ科の魚がいるということでダムのバックウォーターを目指した。
日本だとヤマメが潜むような小渓流。
そこから飛び出してくるのはコイ科の魚。
最初に出逢えたのはこの釣りの定番、プラーカスープ。
渓流というロケーションで初めて手にしたということもあり、とても嬉しいイッピキ。
腰まで浸かりつつ船を押し上げ、上流域を目指す。
流れや淵、丁寧に探っていくも、反応が薄い…
潜んでいれば高確率で反応がある筈なのだが、
ロケーションは最高なのだけれど、生命感が無さ過ぎる。

Huerco:XT511-5S
SHIMANO:08バイオマスターC3000
PE1号+フロロ16lb+バクシンスナップ#1
スミス:Dコンタクト63
少し釣り上がると中規模な淵に入り、少し上流に三艇の漁師の船が見えた。
三艇で魚を追い込み、投網で一網打尽に…
容赦なく投網が投げ込まれ、
次から次へと水揚げされていく大小様々な魚達。
中にはマシールっぽい魚の姿も。
…そりゃ釣れねーべ。
こういったシーンは今まで何度も見てきているが、
これを続けていると魚は居なくなるよね…
「獲れる分は全て獲り尽くす。」
タイの恐ろしさを改めて思い知った瞬間だった。
結局この日は可愛いカスープが二本のみ。
メコン漁二日目は計三本のメコンオオナマズが漁獲された。
サイズは前日に漁獲されたものと同じぐらいだろうか。
何度見ても凄い迫力だ。
既に輸送用のトラックが待機しており、
漁獲された三個体は釣り堀へと出荷されていった。
この日の日中は灼熱の湖上でチャドー修行。
雨季から乾季に移り変わるタイミング。
普段は激シブというこの湖だが、なんとか全員が魚の姿を拝む事ができた。

Huerco:XT610-4C
SHIMANO:スピードマスター200
PE4号+フロロ60lb+バクシンスナップ#2
FishingEZ:レオパードフロッグ
タイの友人が作ったジャンパーフロッグにて。
まだまだ可愛いサイズだが、雲で太陽が隠れた一瞬のチャンス。
派手なアタックをモノにでき、とても嬉しいイッピキだった。
そして迎えたメコン漁三日目、最終日。
最終日の朝一に2m 100kg超の個体が一本網に掛かり、
写真の魚が今回のメコンオオナマズ漁体験における最後のイッピキとなった。
この湖においては年間キャッチした本数×多数のメコンオオナマズの稚魚を漁師達が放流しているという。
野生下でこれ程までに激減したメコンオオナマズを安定的に漁獲できる湖は数が少なく、
今回のように漁を体験できる場所は、今のところこの湖だけかもしれない。
「獲れる分は全て獲り尽くす。」
そんなイメージの強いタイだが、失敗の繰り返しを経て、
少しずつ変わってきている部分があるのかもしれない。
環境変化や乱獲の煽りを受け、
大きく数を減らしてしまったメコンオオナマズ。
未だに謎に秘められた部分が多く、どこかミステリアスな存在。
こんな魅力的な魚を自らの手で絶やす事のないように…
どうこう偉そうに言える立場ではないが、
なんらかのカタチで自然下に戻ってきてほしい。
巨大なメコンオオナマズが悠々と泳ぎ、
釣りで狙うことができる、いつかそんな日が来ることを願って…
現地のメコン漁師さん、
そしてChillTripのおかげでとても貴重な体験をさせて頂いた今回。
お世話になった皆様、本当にありがとうございました!